ひねもす のたりのたりん

日々の出来事をのたりとつづります

嫌な思い出の利用法

 

人の顔や名前を覚えるのが苦手。

よし覚えた!と思ってもその場を離れるともうあやしい。

そんなに覚えが悪い私でも、10年以上経っても忘れられない人、出来事がある。

 

某医療系の職場で秘書をしていた時の事。

上司からの指示で、ある機械のメンテナンスのため、業者の担当者を呼んだ。

正直、憂鬱な指示だった。

なぜならこの担当者、全くアポイントの時間を守らないからだ。

 

体育会系でいいガタイをした彼は、物腰が低く「はい!」と大きな声で返事をする。

一見爽やかボーイ。

一度目は忘れたのかな。二度目は前の営業先での話が長引いたのかな。

そうやって納得しようとしたけれど、フォローの連絡もなし。

秘書という立場は、時として軽んじられる。私、なめられてる?

疑惑や疑問で頭の中がモヤモヤする。不快。

こちらから会社に電話しても不在。電話口の社員も原因わからず。

 

そうしてやってきた三度目のすっぽかし。

約束の日時を丸1日過ぎた頃やってきた彼ににっこり笑って聞いた。

「約束の日時って昨日でしたよね?

いつもいらっしゃらないけれど、何かご事情があるんですか?

それとも、日時を決めての訪問は不可能なのでしょうか。

上司の指示が遂行できず毎度困っていて、あなたのことは報告済です。

どうしたらきちんと対応して頂けるか教えて頂けませんか?

私の対応では不手際があるのでしょうか?」

キレもせず、こう切り出した私を、ぜひ褒めてほしい。

「あぁ、すみませんでした!次から気を付けますので!」

以上。・・・うそーん。

「いや、今まで一度もいらっしゃらなかったからお話してるんですよ。

私の対応がまずかったですか?それとも毎度そちらさまの都合ですか?

今後きちんと来ていただくためにどうしたらいいかのお話をしたいんです。」

「いやー、ほんとにすみません!」

・・全く話にならない。

そして迎えた次の機会、彼はやっぱりすっぽかした。。

 

頭にきた私は、彼の上司に連絡して事実説明、苦情を申し入れ誠意ある対応を求めた。

けれど、口では謝罪するものの、私を厄介者扱いしていることがバレバレ。

案の定、担当も彼のアポイント破りも変わることはなかった。

この時点で、勿論一連の出来事を上司に報告済。

上司も憤慨していたが、同業他社がないため切ることができないと言われる。

 

すっぽかしの翌日、にこにこしてやってきた彼。どういう面の皮なのだろうか。

私の仕事のスケジュールを乱していることなんて気づきもしないのがすごい。

私はこの日、初めて自分の堪忍袋の緒が切れた音を聞いたのだった。

そして初めて仕事上で相手に怒りを伝えた。

あくまで丁寧な口調で。でも、どこまでも正直に。

「ああー、怒ってますよね。すみません、まあ落ち着いてください~!」

子供をあやすような対応。

上司は自分が呼んでもこないと言っていたけれど、私がばかにされていたんだと思う。

一度キレた後、ラッキーなことに彼を呼ぶ仕事がほぼなくなった。

けれど、すっきりしたというより、時折思い出す程嫌な思い出として残っている。

 

一連の出来事で、何が嫌だったのか。

・なぜ約束の日時にこないかの説明がされない(疑問が解決しない)

・こちらの話を聞く姿勢が全くない(無視されている)

・状況が改善される望みが全くない(無責任さ、軽んじられた対応)

恐らくこの三点だろう。

怒りの感情は人前で出しづらく、仕事の場では特におさえるべきものと思ってきた。

だけれど、抑え込むばかりでは自分の心身が痛むばかり。

なので、何度も思い出していらいらするような出来事にであってしまったら、

書きだして自分が何に反応しているのか整理することにした。

すると、たまに自分でも意外な本音が出てきたりして面白い。

なんだ、無駄じゃなかったかも、と思えたらしめたもの。

 

忘れられない嫌な思い出に、心を乱されるのは悔しい。

ならば逆に利用すればいいのだ。

しまいこんだり隠したりせず、陽の光にあてて、叩きたり刻んだりして

余すことなく観察する。

そうして自分の糧にする。

そんな健やかな図太さを養っていきたい。